2023-11-24
第10回 節税・節保シリーズ ④減価償却資産 後編!(貸借対照表)
中小企業の経営者の皆さんに、より役立つ情報をお届けいたします。
前回からの続きで、下記の10個のカテゴリーに分けて70個前後の、お金が残る節税案をご紹介いたします!
損益計算書項目の、①売上・仕入原価、②給与、③その他経費項目、
貸借対照表項目の、④減価償却資産、⑤棚卸資産、⑥有価証券、⑦その他の資産、
組織的全般項目の、⑧税率・欠損金、⑨来期以降の決算に向けて、⑩M&Aの検討。
また、経済産業省が中小企業を後押しするために、国が公認している中小企業に優遇されている
節税策を紹介しているパンフレットデータがあります!毎年9月頃発行されていて、このブログの概要欄にURLを
貼り付けておくので、顧問税理士さんのご案内が無い場合が多いので、見ておいてくださいね♪
令和5年度版:中小企業税制→こちら
今回の目次は、コチラ。貸借対照表項目から、減価償却資産に関する6個の節税案です!
Q55.1年以上遊休状態にあり、時価が帳簿価額よりも低くなった固定資産はありますか?
Q56.解体費等の処分費用がかかる等の理由で、そのまま放置している減価償却資産がありますか?
Q57.本社ビル等の、含み損のある不動産を所有していますか?
Q58.航空機やトラックなど動産をリース資産とした、日本型オペレーティングリースの利用は検討されていますか?
Q59.海外不動産への投資を検討されていますか?(法人限定)
Q60.美術品、骨董品、アンティークコインなどへの投資を検討されていますか?
Q55.1年以上遊休状態にあり、時価が帳簿価額よりも低くなった固定資産はありますか?
はい!の方は、減価償却資産が1年以上にわたり遊休状態である場合には、一定の要件をクリアできれば、費用を計上できるぜ!
以下のような事実があった場合には時価を限度として評価替えによる評価損の計上が認められ、含み損を実現することで節税効果が得られるぜ!
①その資産が災害によって著しく損傷したこと
②その資産が1年以上にわたり遊休状態であること
③その資産が、その本来の用途に使用することができないため、他の用途に転用したこと
④その資産の所在する場所の状況が、著しく変化したこと
⑤内国法人について会社更生法等に従って、評価替えをする必要が生じたこと
⑥その他特別な事実
しかし、以下のような場合には、評価損は計上できないので注意が必要だぜ。
①過度の使用によって、その固定資産が著しく損耗していること
②償却を行わなかったために、償却不足額が生じていること
③その他固定資産の評価価額が、取得時の事情等によって他の同種の資産と比較して高いこと
④機械等の急速な進歩によって旧式化していること
(国税庁の見解:固定資産の評価損)→こちら
(国税庁見解:No.5400-2 稼働休止資産の減価償却の可否)→こちら
Q56.解体費等の処分費用がかかる等の理由で、そのまま放置している減価償却資産がありますか?
はい!の方は、帳簿価額からスクラップとしての引き取り価格を控除した残額を除却損として経費に計上できるぜ!
例えば、遊休状態、つまり使っていない建物を取り壊して新しい建物を取得した場合には、その取り壊した建物の価額は、取り壊した日の属する年の経費として計上することができるぜ!
また、実際に廃棄していなくても、法人が使用を廃止した資産で今後事業に使う見込みがない場合には、その資産の帳簿価額から処分見込価額を差し引いた価額を、除却価額として経費に計上することができるから、覚えておくんだぜ!
(国税庁見解:除却損失等の損金算入)→こちら
57.本社ビル等の含み損のある不動産を所有していますか?
はい!の方は、その不動産を100%子会社でない子会社に売却して、含み損を損失として計上しようぜ!
100%子会社でない子会社への取引、若しくは、1,000万円未満の簿価の資産の取引でなければ、時価取引であることを入念に確認して、「含み損」を関連会社へ譲渡して実現させてしまおうだぜ。
しかし、逆に!
①100%子会社への譲渡への譲渡
②譲渡直前の簿価が1,000万円以上ある資産の譲渡
③その他、細かい要件に当てはまる
であれば、「グループ法人税制」というグループ会社間の取引を制限する税制規定が働くので、譲渡損が認識されないことになるので注意が必要だぜ!
(国税庁関係:グループ法人税制質疑応答事例:平成22年10月1日~)→こちら
(国税庁見解:譲渡損益調整資産に係る譲渡損益額の調整)→こちら
Q58.航空機やトラックなど動産をリース資産とした、日本型オペレーティングリースの利用は検討されていますか?
はい!の方は、大型の節税対策であるため、資金繰りに注意して、検討しようだぜ!
そもそも、日本型オペレーティングリースは、航空機や船舶を利用した金融サービス会社が主に提供する商品で、「課税の繰り延べ」を実現し、「将来の設備投資の資金需要に対応」するためなどの、キャッシュフロー・マネジメントとして活用される手法なんだぜ!、
税制の仕組みとしては、通称、「パススルー課税」が採用され、実際に運用している法人としての箱に損益が帰属するのではなく、出資者に損益を帰属させるという税制上の仕組みなんだぜ!それを上手く活用することにより、投資した最初の2~3年は、収益が立ち上がり始めるまでに時間がかかり、その間、減価償却費や維持費の方が大きくなるので、損失が出るということを活用するのが、オペレーティングリースの醍醐味と言えるんだぜ!
この商品の利用には、毎期利益が3,000万以上出ているなどしなければ、資金繰りを圧迫するだけなので、注意をした方が良いぜ!
(国税庁見解:任意組合等の組合事業から生ずる利益等の帰属)→こちら
Q59.海外不動産への投資を検討されていますか?(法人限定)
はい!の方は、こちらも大型の節税対策であるため、資金繰りに注意して、検討しようだぜ!
日本型オペレーティングリースと同じで、課税所得の繰り延べを実現し、主には、安定資産と呼ばれる米国居住用不動産から受領する「ランニング収入」通称「インカムゲイン」、及び、物件売却時の「キャピタルゲイン」の得ることが目的の節税策と言えるぜ!
税制の仕組みとしては、日本で設立された法人は、アメリカであろうが、中国であろうが、インドであろうが、どこの国で得た利益でも日本の税制が適用されるということを利用して、国土の狭い日本では、土地が高いことが通例だけど、国土の広いアメリカでは、建物の方が価値が高く、土地は比較的安いという、日本との逆転現象の仕組みを利用した節税なんだぜ。
個人所得税では、完全にこの節税策は封じられたけど、法人ではまだ残っているぜ。この詳しい仕組みは、「中古資産の特例」を利用した耐用年数を圧縮した、多額の建物取得費を短い年数で減価償却をするということで実現できるので、活用事例が多いんだぜ。
この商品の利用にも、毎期利益が3,000万以上出ているなどしなければ、資金繰りを圧迫するだけなので、注意をした方が良いぜ!
(日本貿易振興機構=ジェトロ:課税所得の帰属:3.3.4 法人課税所得の範囲)→こちら
Q60.美術品、骨董品、アンティークコインなどへの投資を検討されていますか?
はい!の方は、美術品等に関する、平成27年以降の通達改正の利用を検討していこうぜ!
Q40で解説したように、原則的には「時の経過により価値が減少しない資産」は土地と同じ扱いになり、どれだけ高額でも費用計上できないのが、税法上のルールだぜ。しかし、取得価額が1点100万円以上であっても、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」として減価償却資産に該当することになっているぜ!
例えば、次の3つの事項をすべて満たす美術品等が上げられるぜ!
①会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として取得されるものであること。
②移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであること。
③他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものであること。
これらを満たせば、1,000万円の美術品等であっても、下記の耐用年数が、これも「中古資産の特例」を利用した節税になりえるので、検討してみるんだぜ!
美術品等が「器具及び備品」の室内装飾品に該当する場合には、次の耐用年数。
(1)室内装飾品のうち主として金属製のもの……… 15年
例:金属製の彫刻
(2)室内装飾品のうちその他のもの………………… 8年
例:絵画・陶磁器・彫刻(主として金属製のもの以外のもの)
(国税庁見解:美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ)→こちら
今回は、減価償却資産の中でも、高度な節税策を紹介したぜ。結局は、税務調査に耐えうる入念な準備をしているか。これに限るぜ。
次回は、棚卸資産、有価証券、その他の資産からの節税策をお届けするから、楽しみにしといてくれよな。